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横浜FCと横浜FCと横浜FCとあと横浜FCなんかに関して書いたり書かなかったりします。ほかの事を書くこともあります。
by naminos
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はたらくおにいさん2
その製本所は文学関連で大手の出版社の製品を専門に請け負っている製本所で、手持ちの文庫本を見るとその中にちゃんと製本所として名前が出ていた。面接は社長を名乗る無愛想で小太りの老紳士が受けてくれた。一応書いた履歴書をもっていくと特に質問もなく、すぐに給料額と支払日と勤務時間などを告げられ、いつからこれるかと聞かれたので、いつでもと答えるとじゃあ明日から来てくれと言われた。

製本所は工場である。朝は8時から機械が動くので7時50分には来るように言われた。三崎町という地名からはピンとこなかったが、駅は水道橋。東京ドームが見えるぐらいすぐ近くの路地裏だった。駅から近いのはありがたいが、伯父の家の最寄の私鉄からはあまりアクセスがよくない。7時前には出ないと上手く着けないので起床は6時半では遅いぐらいだ。それまで昼前までだらだら寝ていたたるんだ身には少々きついものだった。

それでも初日の緊張感から、上手いこと目覚めることができ、乗り換えもスムーズで、どうにか定刻には工場へ着く事が出来た。

俺と同様にこの日が初日だという若いのと一緒に古株っぽいおっさんに工場を案内してもらう。妙に愛想がよく、話もわかりやすい。いつも案内してるから慣れているのかもしれない。

ここでは印刷された大判の紙を折って、並べて、綴じて、リボンをつけて、リボンをはさんで、のりで固めて、表紙をつけて、断裁して、カバーをつけて、いろいろはさんで、積んで、出荷する。まあ製本所だから他にすることもないのだけど。

とりあえず初日なので、本を断裁するまえにリボンを手作業で挟み込む仕事に充てられた。ベテランのヤンキー兄ちゃんが妙に慣れた手つきでサクサクと作業を進めていくのを見て、こりゃ見事だなと思って、俺も手順を真似て、本の山を片付けていった。1ロット終わる頃には慣れて、あんちゃんと大して変わらないペースで出来るようになったので、特に熟練工でなくてもできるんだなと思った。まあそのあんちゃんは他の仕事もひととおりこなせるのでなかなか優秀な人材なんだけどね。

何種類めかの本をやりかけているときにチャイムがなった。あんちゃんやおばちゃんは本の山の途中でぱったりと作業やめて席を立った。俺はこの山だけでも済ませてからと思って作業を続けていたのだが、あんちゃんが「ほれ、終わりだよ」と促すので、ああ、途中でも「やめないといけない」のだなと空気を読んで、俺も席を立った。

昼休みは1時間だが外出も自由なのでとりあえず作業着を脱いで外に出た。朝一緒だった若いのが近くにいたので声をかけてみた。一緒に飯を食わないかと言うと、もう買ってあるというので俺も近くで買って2人で東京ドームへ行って食べることになった。

彼は朝鮮系の苗字を名乗ったが、日本人だと言った。俺は変わった苗字だねえとだけ答えたが特に何かを思ったわけではなかった。同じ苗字の在日の友人がいるのだが、特にその話をすることはなかった。だからといって何がどうということもなかった。彼はバンドでギターをやっているのだと言っていたが、詳しい話はあまり覚えていない。彼は3日ほど東京ドームで昼食を共にしたが、4日目から来なかった。それきり会っていない。

つづく
by naminos | 2005-04-20 19:06 | 思い出
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