横浜FCと横浜FCと横浜FCとあと横浜FCなんかに関して書いたり書かなかったりします。ほかの事を書くこともあります。
by naminos
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
カテゴリ:連載( 28 )
十三日間日本一周 drive15 3rd day 国道10号を走る
夜の訪れた鹿児島市街を後にしたのが19時20分。
朝に福岡で給油してからこれまでに470kmを走行している。そろそろ給油を考えないとならないが、鹿児島から海岸線を走る国道10号沿いにはなかなかGSが見当たらない。交通量は少なくないのだがなあと思いながらもまだガス欠までには十分余裕があるのでのんびり走っていた。

鹿児島から30分ほど走った姶良のあたりで給油。福岡金立SAでの給油から490km。朝走り出してから金立まで50km。合計で540km走っているわけだ。さすがに疲れてきたが、勢いがあるのでなんとかなりそうだ。幸い眠気があまりない。腹が減ってきたので近くで食料を調達したいが、食ったら眠くなりそうなのが気になる。ここは迷うところだ。

現在の目的地は大分の佐伯港である。ここから四国に渡るフェリーにのる。出港時刻は午前3時。その便を逃すと次は翌朝7時なので時間が無駄になる。ここはなんとしても一気に佐伯まで行ってしまいたい。フェリーの中で眠ればその分時間も距離も稼げるからだ。
その佐伯までは姶良から250km以上あるのが頭の痛いところ。

問題はルートだ。加治木から高速に乗れば宮崎自動車道を経由して一気に宮崎か西都まで行ける。だが、これはあまりに遠回りのように思う。距離的にはそれほど長くないし、この先は地域的にも時間的にも渋滞はないと思われるので一般道で最短距離を行くことにした。

姶良から加治木を抜け国分あたりから国道10号は海岸を離れ内陸を抜けていく。財部から都城に入る。ここまでは本当に人気のないような山の中を抜けてきたが、都城はそこそこに賑やかで明かりも多い。コンビニでやきそばパンとコーヒーを買う。誰かに頼まれて買うのではなく自分で食うためだ。ダッシュはしたけど。

残り時間と距離を考えれば、そんなに慌てる必要はないのだが、何しろ未知の土地である。まるで通ったことのない暗い夜道をナビだけを頼りに走っているのだから正直ストレスがたまる。長距離トラックどもを煽り煽られ行くのだから疲れる。さらには、現地人の軽トラなんかが割り込んできてのろのろ走ったりでりイライラと疲れがどんどん上昇していくのである。
とにかく、眠くなる前に一気に佐伯まで行って現地でゆっくりしたい、と思っていた。途中何があるかわからないわけだし、港まで着いてしまえばどんなに時間が余ったって構わないのである。このペースで行けば2時ごろには現地に到着できる。ナビの所要時間計算ではそんな感じである。

22時過ぎごろ、宮崎市内を通過する。
道路わきに椰子の木が植えられ、南国ムードたっぷりである。宮崎と言えば読売のキャンプぐらいの印象しかなかったが、なかなか華やかで楽しそうな街である。もう少し早く来てればちょっと寄ってそのまま1泊することになっていたかもしれない。しかしまあこの時点で22時なので、これから店を探したりしても遅すぎる。後ろ髪を引かれる思いで光に溢れる街中を通過した。
暗いのではっきりとはわからないが、夜景を見る限りでは宮崎は西向きの広大な傾斜地のようである。さぞやのんびりした雰囲気なんだろうなあなどと思いながらトラックに囲まれて街道を北上した。

国道10号は宮崎を抜け、再び海岸近くを走る。道路沿いは店も少なく暗い。がその分信号は少ないのでいいペースで走ることが出来た。姶良から133km地点で23時05分というメモが残っている。少し休憩した場所だと思う。この辺がほぼ中間地点だ。

この後日向や延岡を抜けているが、実はあまり覚えていない。目の前のトラックと後ろのトラックと対向車のトラックと通行人の有無の確認でいっぱいいっぱいでもうどこを走っているかなんて考えるゆとりはなくなっていたのだ。

延岡を抜けると国道10号は再び山へ入っていく。思ったよりも険しい山道が続いている。しばらく行くと山を縫うようにして走る線路が見えた。道路の上や下、横にたびたび線路が見え隠れしている。日豊本線というらしい。鉄ちゃんならよく知る鉄道だろうがあいにく俺は予備知識がない。だが、眺めがよいことは容易に想像できる。いつか昼間に来たいなあと思いながら山道を走り抜けた。

山間部を抜けるといよいよ佐伯の街である。佐伯と書いてさいきと読むのは現地に行って初めてわかった。さえきじゃねえのか。
市街を抜けて港へ。暗い中にぽつんと港湾事務所周辺だけが光っている。乗船者用駐車場にクルマを停める。
午前1時30分。姶良から258km。福岡から約750km。本日の最終ゴールである。

b0060919_1934324.jpg

[PR]
by naminos | 2005-01-08 12:22 | 連載
十三日間日本一周 drive14 3rd day 焼酎エクスプローラー
トンネルと抜けるとそこは市街地だった。
郊外がなくいきなり市街という点では少し長崎ににているかもしれない。渋滞もしているし。
先は詰まっているようなので最初の信号で左折した。
鹿児島の市街についてまったく予備知識がなかったので、どこをどう行けばいいのやらさっぱりわからない。桜島を見るってこと以外何も考えていなかったのだ。
しばらく道なりに進むと小さな酒屋があった。

路肩にクルマを止めて店内へ侵入。店主が「いらっしゃい」と声を掛けてくる。中央につまみなどが置かれた棚。左奥にはショーケースの冷蔵庫。ビールや缶チューハイ、冷酒などが収められている。右の棚には贈答用だろうか、日本酒や焼酎が並んでいる。
ざっと探してみるが森伊蔵も魔王も見当たらない。
一応店主に聞いて見るが「もうないでごわす」とつれない返事。
「じゃまた」と店を出る。

またクルマを進めると逆側に酒屋らしき店舗を発見。しかし営業していないようで灯りもついていない状態だ。降りるだけムダなのでスルーして先へ。

またしばらく行くと、先ほどの店舗よりさらに小さい酒屋を発見。営業もしている。クルマを止め店内へ。
すると目の前に「魔王」の文字が。おお、あるじゃないか。
だが他の酒と縄でひとくくりになっていて8000円と書いてある。
抱き合わせかよ!
8000円じゃ別れた女への土産にしてはあまりに予算オーバーだ。悩む。
店内を回るが、他に魔王はない。店主に聞いて見るが「それで最後でごわす」とつれない返事。単品で売ってもらえないかと弱弱しく聞いてみは見たが「それはやってないでごわす」とのこれまたつれない返事。
時間は6時を回っていて、店主からは今にも閉店しそうな気配がビンビンに伝わってくる。他を回って戻ってきてもここはもう閉店後だろう。それに他で見つかる保証もない。そもそも酒屋自体が全部閉まってしまったらどうしようもない。
仕方ない。買おう。
あきらめて店主の言いなりに8000円で抱き合わせ商品を買う。無念ではあるが、土産物としての迫力は増したのでそこはよしとするか。贈答用に包んでもらう。後日談になるが、俺は結局これを飲めずじまいだったので非常に悔やまれる。一番美味い物は自分のために買うべきなのだと痛感した次第である。が、この時はまだ芋焼酎の美味さに目覚めていなかったので判断を誤ったとしても自分を責められないのもまた仕方のないことではある。

さて。探す焼酎はまだある。実家への土産用と自分用である。
もうさすがに抱き合わせモノを買うわけにもいかないのでハーフボトルぐらいで適当なものを買っていこう。
魔王を買った店は市街でも外れの方にあることは、このあと移動して初めてわかったことであるが、見る店見る店次々に閉店していき、なかなかよさそうな酒屋が見つからなくなっていた。7時ぐらいにはもうどこも閉まってしまうかのような勢いで街が眠り始めていたのだった。

しばらくグルグルと回っていたが、運良く空いているパーキングが見つかったのでクルマを入れ、少し歩くことにした。
路地裏のパーキングから明るい方へ歩くと、そこはアーケード商店街になっていた。
いわゆる「天文館」である。

当時は知らなかったが天文館は有名なアーケード商店街で、観光名所的な存在でもあるようだ。だが知らなかったのでやけに活気のある商店街だなあというぐらいにしか思わなかった。
地の果てかと思っていた九州最南の町がこんなに華やかだとは意外だったし、何か異国情緒を感じて楽しい気分になった。
時間柄閉店した店も少なくなかったが、まだ人通りは多かった。
何ブロックか歩くとディスカウントっぽい酒屋を見つけた。閉店間際のようだが客は多く、店員も多かった。
店内は所狭しと酒類が並べられていたが、やはり焼酎が多いようだ。ビールのコーナーよりも大きなスペースが割り当てられてるぐらい焼酎が多い。種類も多ければ在庫も多い。
だが、魔王も森伊蔵もここにはなかった。
ないものは仕方がないので、あるものを買ってしまおう。おそらくあと10分程度で閉店になってしまうだろう。
ざっと見たところ兼重という芋焼酎が売れ筋のようだ。とりあえず1本はこれにしておこう。もう1本はどうしようかと眺めていると、
「大魔王」
という焼酎が目に付いた。目に付いた時点で決めた。明らかにパクリであるが、大魔王様なので魔王よりも強かろう。いいじゃないこれ。
(島美人もあったのだが選ばなかった。今考えると無念である)

これらは贈答でもなんでもないので簡単に袋に入れてもらって店を出た。この当時は特別焼酎好きでもなかったのであっさり退散したが、もし今の俺が鹿児島に行ったら丸三日は焼酎のためだけに滞在することになっていただろう。これについては心残りである。

7時を回るととっぷりと日が暮れ、街は夜になる。鹿児島の街は何か暖かい光に満ちていて俺は好きになった。どこか仙台に似ているような気がした。

クルマに戻って酒を積み直し、いよいよ九州脱出である。
タイムリミットは午前3時。目的地は大分・佐伯港。経由ルートはすべて一般道。
そして俺の体力はもう限界寸前なのであった。
b0060919_1419561.jpg

[PR]
by naminos | 2005-01-07 12:13 | 連載
十三日間日本一周の続きは
正月ネットから離れる間にゴリゴリ書くので年明けには本格再開の見通しであります。

鹿児島で焼酎は見つかるのか?!
九州脱出までのタイムリミットはあとわずか!
四国迷走編は?
リタイヤ寸前に・・・
そして訪れる休息の2日間
太平洋ベルト20時間耐久爆走編
そして後半へ

COMING SOON
[PR]
by naminos | 2004-12-29 10:29 | 連載
十三日間日本一周 drive13 3rd day 桜島エクスプレス
15:40 阿蘇山上駐車場を出発
ナビの計算では到着時間が19時半過ぎだ。話にならん。この時期だとたぶん日没が18時ごろだからそれまでには桜島が見えるところまで行ってないとダメだ。
とりあえず急いで阿蘇を降りる。一般道では時間が稼げない。高速でどこまで短縮できるかが勝負になるだろう。だが、少しでも時間を稼いでおきたいのも事実。熊本あたりで渋滞などしていたらもうどうしようもない。まったく交通事情がわからないのも痛い。VICSは載っているが、果たしてどこまであてになるものか。
ありがたいことに熊本ICまでかなりスムーズに来れた。これならイケるかもしれない。

九州自動車道は本州と接続する門司から鹿児島まで続く、まさに九州の脊髄である。
熊本はちょうどその中ほどに位置するわけなのだが、熊本ICから鹿児島ICまで170kmほどある。残り時間から考えると少々厳しい感じだが、幸い高速道路上は空いていて空き放題走れそうだ。周囲に注意しながら徐々にペースをあげていく。
いい感じのペースで走っていると到着予定時間が徐々に早くなってきた。このまま行けたらなんとかなりそうだ。八代、人吉、えびのと抜け、えびのJCTで宮崎自動車道と分岐する。俺はひたすらペースを上げ続ける。陽はいよいよ傾きはじめ、目標までの到達は微妙な感じだ。もともと間に合わないところをなんとか間に合いそうなところまでがんばってきたが、少し間に合わない感じになってきた。思ったよりも日没時間が早そうだ。とりあえず桜島が見られればそれでいいのだが、どの辺から見えるのかよくわからないのが問題だ。見えるところを探さなければならないのだろうか。そんな時間はあるのか?

いつのまにか結構ヤバいペースで走っていることに気づき、少し落とす。こんなペースで見つかったらそれこそ旅自体をリタイヤしなきゃならないくなる。北日本行きに備えてスタッドレスタイヤのままなのでロードノイズも相当なものだ。少し暗くなり始めてきたが、天気がいいので視界は悪くない。

鹿児島空港を過ぎた。そろそろ見えるだろうか?高速から見えるとありがたいのだが防音壁があるとまず見られないだろう。ふと、ナビを見ると「桜島SA」というのが見えた。鹿児島ICよりだいぶ手前だ。加治木からすぐ、湾の向かい側ぐらいだ。桜島というからには桜島が見えなければうそだ。と思うが、どうだろうか・・・。俺は一か八かその桜島SAに飛び込んだ。

桜島SAからは海が見えた。肝心の桜島は?駐車場からは見えないが。もうだいぶ陽が傾いている。もう10数分もすれば急に暗くなるだろう。ここで見えなければ目標は達成できず、鹿児島で1泊ということになるだろう。それはそれでいいが、この先どのぐらい時間がかかるかわからない以上はできるだけ先を急ぎたい。
カメラを持ってSA施設へ向かう。

建物の中ほどがすっぽり空けてあり、オープンスペースの休憩所になっている。
そこから桜島が正面に見えた。間違いない。見覚えのある島影だ。案内板もある。
間に合ったので記念撮影。
b0060919_7224260.jpg

トイレを済ませ、この後どうするか考える。とりあえず鹿児島へは行こう。焼酎を買わなければならない。なぜなら鹿児島だからだ。Umasukiにメールをして焼酎のことを聞く。「森以蔵」と返信があった。しかしこれはレアなので、なければ魔王とも言っている。ふむ。とりあえず市内にいくしかないだろう。
b0060919_7234949.jpg

桜島SAを出るともう陽が暮れてきた。鹿児島ICに着く頃にはすっかり薄暗くなってしまっていた。あと全然桜島見えないし。やっぱSAで見て正解だった。
鹿児島ICを出るといきなり渋滞。長崎と似たような状況にうんざり。九州は土地開発が下手なのかそれとも人口の増加、都市の発展に、開発力がおいついてないのか。あるいは開発しにくい土地にばかり街があるのか。
高速から最初のトンネルと抜けると渋滞は解消し、市内はスムーズだった。
18:30鹿児島市内到着

さて焼酎探しだ。時間は1時間程度。急ごう。

つづく
b0060919_7222115.jpg

[PR]
by naminos | 2004-12-19 07:07 | 連載
十三日間日本一周 drive12 3rd day 阿蘇
ついに熊本上陸。でごわす。
フェリーの着いた長洲の町は本当に寂れていて、首都からの隔たりをものすごく感じさせる雰囲気をビンビンに漂わせていた。長崎側の方がよほど栄えていたように思う。
ひとまず目的地を阿蘇山に定め、俺は再びクルマを発進させた。

この旅は、街は走り抜けるが、人間とはほとんど接していない。本来ならばそんなものは旅でもなんでもないのだが、実際に自分で移動してみて、この島国のリアルなサイズというものが少しわかってきていた。そういう意味ではいい経験をしていると思う。地図上の距離が実際にどのくらいなのか肌でわかるようになったし、通った場所であればどんな街並みだったか思い起こされるので、都市の規模や経済のレベルがなんとなくは想像がつくようになったからだ。まったくの想像よりははるかに精度が高いように思う。それはともかく、旅立ってからこっちまともに会話したのは萩の陶器屋のオヤジと北九州の篠田ちゃんぐらいで、あとはこのナビの音声だけである。
この頃になるとナビを「ナビ子」などと呼び出し、音声ガイドに返事したり、「お前はマイペースな女だな」などと話しかけたり精神衰弱の兆候が現れてきているのだが、当人はあまり気づいていない。しかし今はこの女の案内するがままにコマを進めるしかない。ナビ子はひたすら職務に忠実に阿蘇山への案内を続けていた。

熊本市街地に最接近するが、今回は泣く泣くスルー。とにかく阿蘇へ急いだ。熊本から合志、菊陽、大津を抜ける。ナビはなぜか太い国道を行かず、妙に細い農道を案内した。疑問に思うがとりあえず案内に従う。国道沿いは他所なみに点々と店があるが、一本外れると急に閑散としている。
家が妙に飛び飛びだからそう感じるのかもしれないが、新しい家屋が少ないというのもその印象をさらに強めていたかもしれない。農家1軒あたりの作付面積が大きいのかもしれない。裏づけはないけどそんなことを思った。
ナビのルートはうまいことショーカットになっていたので少し時間を短縮できたようだ。


b0060919_6183238.jpg田畑から徐々に傾斜のある地帯に移っていく。前方には壁のような山陰が見えてきた。ナビ画面の縮尺を変えてみると、どうやらあれが外輪山のようだ。なるほどでかい。
しかし外輪山というよりも、もうそういう地形という感じである。あれが丸ごと火山なのかと思うとそら恐ろしい。雲仙といい阿蘇といい、九州は火の国とはよく言ったものだ。こいつらに比べたら浅間などかわいいものだと思う。
外輪山を一気に駆け上がると、なるほど、その内部に広大な世界が独立してあった。しかしまあ科学的な見地でこれは1つの山だということがわからなければ、単なる盆地と何ら変わるものな気はした。実際に見てしまえばそんなものなのだ。
外輪山の内部には街の様なものは見当たらず、農村と観光のエリアが続く。天候があまりよくないので、山頂は見えない。ひたすら道なりに進むと徐々に標高が上がっていくのがわかる。阿蘇山山頂への看板も目立ち始め、宿泊施設も目に付くようになってきた。そして家があまり見られなくなるぐらい上ったその先が急に開けた。


b0060919_6195860.jpg
b0060919_622362.jpg草千里。教科書で見たあの光景だ。思わずクルマを止めて降りた。
建造物が何もなく、ひたすら野が続き、池もある。なんなんだここは。
自然=森林という感覚の俺にとっては、こんな野原?は意外以外の何者でもない。ここは馬を放牧しているらしいから牧草地なのだろうか?それにしては広すぎる。だだっぴろい空間がぽっかりまるごと草地なので距離感がおかしくなってしまった。
今はまだ3月なので新芽は出ていない。そのため枯草千里という感じなのだが、それでも十分にこの光景は美しかった。
15時ちょうどごろ。俺は阿蘇山にたどり着いた。

b0060919_621248.jpg


b0060919_6235280.jpg草千里の先には大きな駐車場と観光施設があった。乗馬もできるのだそうだ。道からいきなり駐車場に入ってしまったので、ここが一番上なのかなと思っていたらその先にまだ道があった。クルマで行けるならどんどん行こう。


b0060919_6245181.jpg


駐車場を通り抜けて山頂へ向かう道路に入った。
道路は狭く荒れていたが、通行不能というほどのことはない。草千里は美しかったが、山頂に近づくにつれ辺りは荒々しい風景に激変していく。まさに火山といった光景である。昔の人間はここをどんな場所だと思っていたのだろうか。荒れたアスファルトの道を進むと山頂に最も近い駐車場にたどり着いた。

b0060919_6255340.jpg

b0060919_6264220.jpg


b0060919_6272576.jpg阿蘇山上駐車場と呼ばれるそこは、もう火口まであと少しという場所で、こんなに近くまでクルマで来れてしまうのだなと驚いた。立て看板がいくつもある。「噴煙注意」「有毒ガス発生時は・・・・」。げ。マジ?。辺りを見るとなにやら砦のようなものがいくつも並んでいる。看板があった。「緊急時にはシェルターへ・・・」。噴火すんのかよ!活火山である以上は当然噴火もするだろうが、有毒ガスの警告やシェルターなどを見るととてもリアルだ。というかそんなものが必要な場所までも観光地にしてしまうそのたくましい商魂にこそ驚かされるが、これほどまでに雄大な山岳であればそれも致し方ないことだろう。
「本日は有毒ガスが発生しておりますので、山頂への立ち入りはできません」とアナウンスが流れた。出てるんだ。ガス。すげえな。上までいけないのであれば、阿蘇もここまでってことでいいだろう。妙な満足感が得られたので、このあとどうするか考えることにした。

現在15時30分。日没はおそらく18時前後だろう。次の目標といえば桜島なのだが、夜になってしまっては見えないだろうから、鹿児島で1泊ということになるだろうか。しかしとりあえず桜島を見てしまえば先にコマを進められるようになるな。
ナビで計算してみるとちょっと間に合わないような時間が出た。が、途中には高速もあるし、だいたいナビの予測時間よりどのぐらい早く着けるかわかってきていたので、俺は日没までに桜島を見ると言うミッションにチャレンジすることに決めた。
15時40分。桜島に向けて阿蘇を出発。九州に来て火山しか見てないぞ俺は。いいのか?
b0060919_628359.jpg

[PR]
by naminos | 2004-12-16 05:41 | 連載
十三日間日本一周EX 番外編 寄ってくるべきだったのにシリーズその1「水木ロード」
“妖怪”のスポンサー募集 鳥取県境港の水木ロード

駆け足の旅なので寄り洩らしたところは無数にあるが、やはり水木ロードは見てくるべきだったのである。無念。
[PR]
by naminos | 2004-12-14 12:48 | 連載
十三日間日本一周 drive11 3rd day 有明フェリー
長崎に早々に見切りをつけ、一路島原街道でフェリーの出る多比良港へ向かう。
約1時間ほどで到着するとナビに表示されていたので、あまり慌てないで済んだ。

国道沿いを走る限りは、全国どこでも大差ないように思う。街と街を街道が繋ぎ、市街地が込む場合はバイパスで迂回させたり近道をさせたりする。郊外には大型の商業施設が並び、街から離れるにつれ店舗が減り、住宅もそれらを追うように減っていく。入れ替わりに田園風景が現れる。田園風景も薄れてくると森林や山岳が目立つようになり、道路も険しくなる。峠から下るときはその逆だ。パターンは決まっている。
全国どこでも見たような看板が並び、どこでもマクドナルドがありコンビニがある。あまり聞かない地方のDIYショップでも、並んでいる商品にあまり違いはない。そんなもんだ。
長崎から国見までの国道を走りながらそんなことを思っていた。その時の俺の目では、まだそんなことしか見えていなかったのだ。旅に出て3日目。まだ俺は俺のままだったし、見る風景も今までと同じ様にしか見えていなかった。山陰から九州まで来て、最初こそ街並の微妙な違いに驚かされ期待しこそしたものの、旅に慣れてくるうちに街の規模は違いこそすれ、その構成部品についてはどこも変わらないのではないかと思い始めていた。実際、国道沿いや市街地はその通りで、全国展開のチェーン店などを見ている限りは、それがどこへ行っても同じで当たり前なのである。
俺はこの時はまだ知らなかったのだ。知らなかったから見えなかったのだ。見えないから気付かなかったのだ。見えているものの脇にすごいものが転がっているということに。

見えないながらも諫早湾という看板を見ると、ああ、ここがムツゴロウで干拓での諫早湾なのかと感慨深いものがあった。教科書や図鑑で見たようなものの間近に来たと思うと、なかなかわくわくしてくるものだ。が、時間がないのでクルマは走り続ける。
天気がいいのでドライブは最高だ。諫早の海は美しく、春の光に満ちていた。見慣れない風景なので眠気もない。エンジンは好調だし、ガソリンはたっぷりだし、道はすいてきたし最高だ。
このクルマにはナビのほかにもう一つ素晴らしいものが付いている。それはMP3対応のカーステである。どう素晴らしいかというと、CD-Rのmp3ファイルが直接再生できるのである。そのために俺は出掛けに手持ちの曲を片っ端から焼いて持ってきていた。
やっぱドライブには音楽なのである。天気はサイコークルマはサイコー。聞いてる曲はメガレンジャー。あらら。いつの間にか特撮ソングのフォルダになっていたようだ。懐メロのフォルダに変えてみた。海援隊なんかをわざとらしく聞きながら車は島原半島へ入っていったのだった。

クルマは多比良港のある国見へ。国見といえばサッカーの名門国見高校。連中はこんな田舎で研鑽を重ねていたのかと驚く。信州の田舎で「どうせ田舎だから勝てないのだ」などとひねくれていた青春時代の自分が恥かしくなる。これからは「雪が多くて冬場練習できなかったから」という言い訳に変えよう。


b0060919_4591870.jpg国見あたりまで来るとなにやら見覚えのある山が目に入ってくる。雲仙普賢岳だ。しかも、近い。地図で見るより実際に見える山の方が圧倒的にでかくて、近い。あの大火砕流を放った日本有数の活火山が目と鼻の先なのである。しかも普通に人が暮らしている地域である。ニュースのイメージではもっと人里離れたところだと思っていたのだが、実際には裏山?というほどに近い。ちょっと大げさだが、印象はそのぐらいである。自然てのは人間の都合など考えないで好き放題なんだなあと当たり前の事を強く再認識したのだった。

多比良港には丁度いい時間に到着できた。フェリーも待っている。切符を買い、乗船者の並んでいる車列の後ろにつける。乗船準備のアナウンスが流れると、それまで車外で写真を撮っていたカップルが戻ってきた。こちらを見て何か言っている。どうかしたのかなと思っていたらそのまま自分たちの車に乗り込んだ。はて?と思って前の車を見ていると、ナンバーが俺の出発したところのものだということに気付いた。これか!ていうか偶然すぎ。長崎ナンバーと熊本ナンバーに混じって、まったく関係のないエリアのナンバーが並んでいるのだ。連れでもないのに。乗船してから彼らと仲良くなってその後旅を・・・などと言うことはまったくなく、船内でも会うことはなかった。そんなもんです。


同郷でありながら楽しげなカップルとは別に、俺は一人でクルマをフェリーに乗り入れクルマを降りた。上部デッキにあがるとわりと乗客が多い。普通車1台のフェリー運賃は2200円だ。搭乗者1名分は料金に含まれている。熊本側の長洲港到着まで45分。休憩にちょうどいい。

b0060919_503377.jpg甲板で普賢岳と多比良の町を眺めているとカモメがびっしりと欄干に止まっていた。面白いので1枚取った。前の方ではおっさんがエサを撒いていた。出発してから実家にまったく連絡をしていなかったので電話してみる。お袋が出て、今島原だと告げると移動の早さに驚いていた。
船が出港したあと船内を回るとうどんの自動販売機があったので食す。200円也。腹がふくれたので長椅子で昼寝をする。ぽかぽかしてゆらゆらして実に気持ちがよかった。
b0060919_514951.jpg



目が覚めるとちょうど長洲へ入港するところだった。慌ててクルマに戻りスタンバイをしておく。フェリーはスムーズに接岸し、時間通りに僕たち(名も知らぬ同郷のカップルを含む)は熊本の地を踏んだのだった。

つづく
b0060919_450464.jpg

[PR]
by naminos | 2004-12-10 13:30 | 連載
十三日間日本一周 drive10 3rd day 長崎は
福岡都市高速の千代インターから上がり、ひとまず九州自動車道へ向かう。太宰府で九州自動車道本流と合流した。通勤時間帯なのでそれなりに交通量はあるが、渋滞まではいたらず流れは悪くない。鳥栖ジャンクションで九州自動車道から離れ、長崎自動車道へ入る。

次々に現れる見慣れない地名を見ていて思ったのだが、九州の地名は当て字っぽいものが多いように思う。久留米、夜須、脊振、多久などなんとなく万葉仮名っぽいのが多い。これは漢字が日本に入って来る前から地名があったということなのだろうか。そんなことからも歴史の古さを感じさせられた。

9時30分。金立SAにて休憩。篠田嬢にメールしたりしてみる。給油も行う。もう何回目の給油か忘れてしまった。多い日は1日に2回給油を行っているので、ガス代は相当なものになるだろうな。旅費の大半はガス代と高速代フェリー代になるだろう。

高速からは山や田畑しか見えないので、あまり現地の様子がわからない。山陰は高速がなかったが、その分町並みをたっぷり楽しめたように思う。しかし、地形もそれなりに地域性があるので見方によっては面白い。福岡周辺は比較的平地が多かったのだが、長崎に近づくにつれ起伏が大きい地形に移り変わっていった。もっとも高速道路は山際に作られることが多いのでそう感じているだけかもしれないが。

大村湾が見える(ゴメン。見えてないかも)と、長崎も近い。諫早、多良見からバイパスに出た辺りで大失敗をしてしまった。そのまま長崎市内に出るつもりが、時津方面へのバイパスに乗ってしまったのだ。あわてて降りて戻ろうとするが、戻る道はおろかUターンする場所も見当たらない。道が狭く交通量も多いため身動きが非常にしにくい。店も家もわき道もなかなかみつからずただ流されるように先に進まされてしまった。15分ほども走ってようやくUターンし、もと来た道を戻り、通行料を余分に払わされ川平からトンネルを抜けて長崎市街地へ向かった。


b0060919_10523578.jpgトンネルを抜けるとそこは谷間なのだが、すでに市街地だった。山間部からいきなり市街地に飛び出したので驚いた。普通はそんな山あいから抜けると、まずは遠くに市街地が見えるような郊外に出るものだ。だが、長崎には郊外はなく、平地になる前に山あいからすでに市街地になっていた。つまり谷を形成している両斜面に住宅街がへばりついているのである。
b0060919_10513015.jpg「長崎には坂が多い」と聞いていたが、それはつまり起伏の激しい地形にむりやり街を作ったので坂だらけだったということなのだ。百聞は一見に如かずとはよく言ったもので、なんとなくしかなかった長崎という街の雰囲気が急激にリアルなものになっていった。原子爆弾が落とされたとき、長崎はその地形から被害が増大したらしいと読んだことがあったが、なるほどこんな狭い谷あいから入り江につながる街にそんなものを落としたらエネルギーが集中してしまうというのはわかる話だ。そのぐらい長崎は極端な地形なのである。もちろん地形としては珍しいものではない。横浜から横須賀へ行くあたりにも、このような起伏の激しい地形はある。が、そこには長崎ほどの都市はない。横浜の市街地は平地であるし、横須賀も多少山際であっても、おおむね平地の街だ。こんな小さな入り江にこれだけの街が配置されているのはなかなか興味深かった。長崎に路面電車があるもの始めて知った。

が、バイパスを出たあたりからずっと渋滞。俺が谷あいの街並みを観察している間、ほとんど進んでいない。どうなってんだこれは。時間はすでに10時半。
長崎では亀山社中の跡地とかめがね橋とかオランダ坂とかいろいろ見ようかなと思っていたのだが、考えたらこのまま市内に突入したところでそれらを全部見ている余裕はない。ないなあ。中途半端だなあ。
有明フェリーの出航時間は12時25分。その次の便はは確か2時過ぎだった気がする。

谷を抜けて最初の交差点を曲がったあたりで、俺はUターンをした。結局長崎ではUターンばかりだったが、長崎ならまた来るだろう。見切りをつけて先へ進むことにした。戻りはしたものの、川平までまた渋滞の中を進むことになった。長崎は坂と渋滞の街なのだった。

b0060919_10492099.jpg

[PR]
by naminos | 2004-12-05 08:47 | 連載
十三日間日本一周 drive09 3rd day 九州縦断計画
目覚めるとそこは福岡だった。朝8時。俺の寝ていたコンビニは駐車場が広く、通勤時間帯でクルマも多かったし、トラックも何台か停めてあったので、仮眠をしていてもあまり目立っていなくてありがたかった。
篠田はまだバイトかな。まるで昨夜の痕跡などない朝の陽光で明るい車内で、一瞬の幻のような邂逅を思い起こしていた。

この旅の中で最も重要な問題のひとつに、「どこで睡眠を取るか」がある。
簡単なのは高速のPAやSA。あと道の駅も問題ない。郊外の大型の公園もタクシーがよく休憩しているようなスポットがあれば、そこは多少長時間でも問題ない。フェリー発着所なんかももちろん大丈夫だ。トラックの運ちゃんが寝てるとこはだいたい問題ない。それは至極当然なんでわざわざ書くまでもない。
問題なのは、都市部で寝るときである。結論から言えば、どこのコンビニで寝ててもとがめられたことはない。クルマから長時間離れれば無断駐車で張り紙されたりするかもしれないが(実際されたことがある)、中で寝ている分には店員も文句の言いようがないだろう。駐車場が2、3台分しかないような小さいところならいざしらず、10台以上の規模のコンビニであれば、端のほうに停めて数時間寝たところで実害がなければ何も言ってこないようだ。というかあくまで結果論なんで、それがわかるまではやはり抵抗があった。俺は小心者なのだ。しかもそんな規模の大きいコンビニは結局郊外にしかないので、俺は仮眠場所を探して幾度となく放浪を繰り返すことになるのだった。

3時間程度だが眠りが深かったので頭はだいぶ回復した。しかし、運転席で眠ったために体が痛い。腰痛は問題ないが、全身がバキバキする。体をほぐしながらコンビニへ入り、朝食を調達した。

さて。これからどうするか。実はこの時点ではまだ何も決まっていない。まさに行き当たりばったりである。
福岡は想像よりもはるかに大きな街で、見える範囲で言えば東京や横浜となんら変わりがない。単に周辺までの広さが多少違うと言うだけで、中心部は大都市たるにふさわしい眺めだ。
本来であれば福岡を1日楽しみたいところなのだが、福岡ぐらいならこれからいくらでもチャンスがあるだろう。それにどうせ来るならもっと金のあるときに夜来たいものだ。この旅では福岡を十分に楽しむことがかないそうにないので、ここは先を急ぐことにした。
ざっと九州全土の地図を眺める。長崎、阿蘇、桜島あたりは興味をそそる。亀山社中に出島、カステラ、長崎は昼間でも楽しめそうだ。阿蘇のカルデラというものも実際はどんな感じなのかぜひ見てみたい。そして、桜島も見てみたかった。
大雑把な流れで言うと、九州を回ったあとは四国に渡るか、山陽に戻るかである。山陽に戻るのならまた北九州も通るなあと少し考えた。が、同じルートを通ると言うのも芸がない話だ。それに北九州に戻ったところでうまく会える保証もない。「ごめーん友達と飲み会で~」とばっさり切られる可能性もあるわけだし。だからというわけではないが、とりあえず四国へ渡るプランを中心に考え始めた。

九州から四国に渡るフェリーは何本かあるが、問題はどこに着くかである。四国に行ったら四万十川は見たかったし、坂本竜馬の高知市も寄りたい。坊ちゃんの松山も行きたいところだ。となると、四万十→高知→徳島→香川→愛媛とぐるり回るいうルートが考えられる。大分県の佐伯港から四万十川の近くの宿毛港までのフェリーがある。早速電話で問い合わせてみる。1日6便あって深夜や早朝もあるようだ。深夜であれば特に予約も要らないだろうとの情報を得た。となると、九州をどんなペースで回れるかは流れで決められそうだ。
長崎から阿蘇に向かうには、有明フェリーを使うのがよさそうだ。こちらも問い合わせてみる。1時間程度に1本ぐらい出ているということだが、昼周辺が中途半端だ。1本遅れると変な時間に熊本に着くことになってしまいそうだ。理想を言えば、午前中に長崎、昼のフェリーで熊本に渡り阿蘇を攻略し、その後南下して鹿児島で1泊。翌日桜島を見てから宮崎、大分と周りフェリーで四国へ。その先はまた考えよう。こんなところか。

俺はひとまず長崎を目指すことにして福岡のコンビニを出た。24時間後どこにいることになるかは想像もしていなかった。もしこの時に「そこ」まで行けといわれても「無理」と答えるだけだったに違いない。まだ石は坂道を転がり始めたばかりなのである。
b0060919_18125814.jpg

[PR]
by naminos | 2004-12-03 05:44 | 連載
十三日間日本一周 drive08 3rd day 篠田
電話を切った僕らは薄暗い蛍光灯の下で抱きしめ合った。

などいうことはまったくなく、ひたすら緊張して照れてまともに会話にならない篠田を持て余して、段々緊張が伝染ってきている自分も同時に持て余している、微妙な距離を置いて車へ目を合わさずにあたりさわりのない会話をしながら移動する俺と篠田(仮名)がいただけだった。

旅に出て3日目の深夜0時30分ごろ。俺は旅に出て初めて、知っている人間と会ったのだが、初対面には違いないのでなんだか不思議な感じはしていた。だが、そんな感慨にふけっているヒマはなかった。とにかく篠田嬢の緊張と照れが尋常でないのだ。そしてその緊張と照れは俺にも伝染し、車までたどり着くまでにピークに達していた。

ひとまず彼女を車に乗せて、俺は駐車料金を支払いに行った。なんで俺までこんなに緊張してんだろう。意外な自分の一面に驚きつつクルマを見ると篠田はうつむいたままケータイを見ているようだった。とにかく俺は腹が減った。腹が減っているから緊張しているだけに違いない。きっとそうだ。深呼吸をして、自動支払機からおつりを取るとクルマに戻った。


俺「お待たせ」
篠「あ、はい」
俺「んー」
篠「はい?」
俺「とりあえず晩飯を・・・」
篠「まだなんですか」
俺「はい、まだです」
篠「私食べないけど、いいですよ」
俺「悪いねー」

クルマを駐車場から出し、通りへ出る。彼女の指示のままにクルマを走らせる。この辺はいつも友達と来てるんですよ、彼氏?彼氏はいまいませんて。そうだっけ?などとあまり内容のない会話をぎこちなく続けながら、10分ほど走ったところのファミレスに入った。

篠「ここいつも来るので」
俺「誰かに見られるとまずい?」
篠「見られてまずいことはないです」
俺「じゃここで食う。もう限界」

俺は和風ハンバーグのセットか何かをドリンクバー付で頼んだ。篠田は本当に何も頼まなかったが、普段から注文しないでファミレスにいるのに慣れているんだろう。何度か促したが、俺も無理に勧めることはしなかった。

俺「時間、大丈夫なの?」
篠「それがですね」
俺「遅すぎたかな。さすがに」
篠「遅いのはいいんですけど、バイトが」
俺「朝早いの?」
篠「ううん。3時からチャットのバイト」

ああ。そういえば旅に出るちょっと前に、チャットの相手をするバイトを始めたとか言ってたなあ。そんなシフトなのか。肌に悪そうだ。

俺「あらー。寝ないといかんのに無理に呼び出しちゃったかな。ごめん」
篠「いやーいつも寝ないのでいいです」
俺「ならいいんだけど」

俺が遅い夕食を平らげた頃にはさすがに緊張もほぐれてきて、会話もスムーズになっていた。午前1時30分。このファミレスは平日なのに結構混んでいる。
2人で交わした最初の話題は、普段行っているチャットメンバーに関してのことだったが、他にさして共通の話題があるわけでもなく、至極当然の流れではあった。特にF氏とD氏については興味深々のようで、会ったことはあるか、どんな風貌かなど聞かれ少しがっかりして「俺のことはぁ?」と冗談めかして言うと、「今会ってるから聞く必要ないじゃないですか」と笑われた。ごもっともである。
その後はいろいろな話が飛び交ったのだが、彼女の話題の多くは、彼女の友人と友人と彼女のことについてだった。それだけ友人を大切に思っているのか、それとも他に話題がないのかまではわからないが、少なくとも孤独の中に埋もれている人間ではないように思えた。一般的な話しかできない俺を「物知りでうらやましい」と彼女は言ったが、多くの友人と日々楽しそうに過ごしている彼女の方がよほどうらやましいと俺は心底思っていた。

当時は知識がなかったのであまり気にしていなかったのだが、今思えば篠田嬢はやたらと氷をかじっていた。明らかに氷食症の症状だったのだが、その日は「氷うまい?」「おいしいよ」という他愛のない会話しかしてなかったのだった。

俺が3杯目のコーヒーを飲み干す頃、もう2時を過ぎていた。篠田の自宅までは遠くないのでバイトの時間はは大丈夫だが、せっかく来てファミレスでだべっていただけではつまらないので、少しドライブでもしようかということになった。

篠「ごめんね。バイト遅れるとなんか評価とかよくないんで」
俺「何、無理やり予定ねじ込んだのは俺のほうだから、ごめんね」

クルマに戻った頃にはだいぶ2人ともリラックスしていた。

俺「どっち行けばいい?」
篠「いいとこあるから、とりあえず左」
俺「了解」

彼女の指示するままに進むと、クルマはだんだん高台に上がっていった。高台は街灯も少なく人気もなかった。道も細くなってきて「どこにいくんだぁ?」と思った頃、

篠「そこを左ね」

ハンドルを切ると眼前に一杯の夜景が飛び込んできた。

俺「おお。いいね」
篠「でしょお。わたしの一番好きな場所だよ」

俺は見事な北九州の夜景を眺めながら、あれはどの辺かこれはどの辺かと地元の人間に無粋な質問を繰り返したが、そのうち篠田が笑い出した。

篠「ここにこの2人でいるのってすっごい不思議ー」
俺「まあちょっと前までは会う可能性もなかったからなぁ」
篠「面白すぎるー」
俺「明日の予定を考えると俺は笑ってられないけどな」
篠「どこまで行くの?」
俺「とりあえず鹿児島まで行きたいけど、そのあと四国行って本州ずっと行って、時間が許せば北海道まで」
篠「北海道行きたいなー」
俺「一緒に行く?」
篠「行きたいなー。でもバイトが」
俺「わはは。バイトじゃしょうがないな」

しばらく夜景を眺めながら考えた。今日のこの瞬間もこの子の記憶にとどめてもらえるのだろうか。この子が友人と共有している多くの思い出の片隅に、この時間も加えてもらえるのだろうか。夜景を見て、タバコを吸いながら、そんなことをぼんやり考えていた。

時計をふと見ると、もう3時まであまり間がなかった。

俺「時間。急がないと」
篠「ほんとだ、ごめんね。」
俺「5分で着くかな」
篠「大丈夫。ほんとにそこだから」

クルマを留め、「またね」「うん、また」「メールしてね」「もちろん」「また来る?」「今度は篠田が来るべき」「あははそうだね」などと交わした後、彼女は手を振りながら路地に消えていった。別れは慌しく、名残もなにもなかったが、これからまた1人になるので、むしろそのぐらいのほうがよかったのかもしれない。

俺はクルマを福岡に向けた。途中少し休憩もしながら、午前5時。俺は名島ICを降りてすぐのコンビニにたどり着き、そこでようやくゆっくり仮眠を取った。長い1日だった。
b0060919_65587.jpg

[PR]
by naminos | 2004-12-01 04:30 | 連載