横浜FCと横浜FCと横浜FCとあと横浜FCなんかに関して書いたり書かなかったりします。ほかの事を書くこともあります。
by naminos
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虚構だったと判明した記憶のストーリー9
その週末は気が狂いそうだった。
会いたくて会いたくて抱きしめたくて悶々と時間を潰した。
写真もないし、電話もかけられないし、手紙を書くにも家は判るが住所はわからないし、ましてや実家がどこかなんて聞いてもない。

俺は最後まで到達できなかった自分を悔いて悔いて本屋にいってホットドッグプレスを買ったり映画館の下見をしたり彼女が好きだと言った小説を買ってみたりとにかく彼女のことを考えていたい自分を満たすための行動を取り続けた。

月曜日の夕方に彼女の部屋まで行ってみたが留守だった。学部ぐらい聞いておけばよかったなあと思いながら、とりあえず待ってみたが帰らないのであきらめて帰った。
次に会えるとしたら俺がシフトを入れた次の週末なのかなと思いながら、帰宅と通学のルートを彼女の家の前経由に切り替えて、僕は訪ね続けた。週末になっても彼女は留守のままだった。

その日バイトに行くとシフト表が変わっていた。彼女の名前があったはずのマスには別のお姉さんの名前があった。それだけじゃなく全てのマスで彼女の名前が書き換えられていた。俺はまったく事態が飲み込めず、ただがっかりしてバイトをこなし、朝来たお姉さんに聞いてみたが、店長に急にシフトに入ってくれと言われたとだけしかわからなかった。

わけがわからないまま、ただもう一度会いたいと思い続けたがその術はなく、俺はひたすら彼女の家の前を通るだけだった。
1ヶ月ほど経ったころ、彼女の荷物が運び出されたことがわかった。カーテンなどがなくなっていたからだ。もうこれでコンタクトを取る方法はまったく思いつかない。俺は奇跡を願うだけで、いつか彼女が俺の部屋を訪ねてくれることを願うようになり、そしてその内何も考えなくなった。

次の春になる頃、俺は受験を理由にバイトをやめることにした。
店長に挨拶に行ったときに思い切って聞いてみた。
「んー?そんな子いたかな?」
「今ぐらいの時期に急に辞めた人で・・・」
「ああ、居たねえ。いい子だったのに。確か親から電話かかってきてね」
「なんかあったんですか?」
「原因わからないけど亡くなったとか言ってたな」





俺は店長に礼を言い、店を後にした。
彼女の部屋にはもう別の住人が住んでいた。
河原でしばらく泣いて家に帰った。

15年ぶりに現地を通ったら、そのコンビニはもう無かった。彼女のいたアパートも建替えられていて面影は無かった。俺の下宿ももうなかった。2人で歩いた道も形を変えていたし、行こうと思っていた映画館も去年閉館した。そして彼女の顔をはっきり思い出すことももうできないし、名前すら正確には思い出せない。

ただ、笑顔の印象と唇の感触だけがそっと記憶の一番底に残っていただけだった。

つづかない
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by naminos | 2005-04-01 23:42 | 思い出
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